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■kuroyanagi taeko
言葉作家:黒柳多恵子がが生み出す「コトノハ」のページ
「決断」
「恋のチカラ」「マリッジブルーの意味」
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「痛み」
「ほんとうに、涙が、出たんです。」
わたしの決断をわたしがいない間に聞かされたようで、彼女はわたしの顔を見るなり、こう言った。
なんだか胸が、とても痛かった。
わたしがもう少しだけ若く、そう、この彼女ぐらいの頃、悪戯にこころを痛めて沢山の時間を費やした。
若いころというのは、避け方を知らない。やみくもにぶつかり、無理矢理に進もうとする。
そうして作った沢山の傷はいまでも時々わたしの胸を締め付ける。
「不安です」
そう言って机に突っ伏してしまった彼女を見ながら、思った。
あと数ヶ月もすれば、たいしたことじゃなかったと彼女も笑うことをわたしは知っている。
でも眉毛の下がった彼女の顔を見ながら、同じ顔だと思った。いつかのわたしの痛い顔。
急に色々なことが甦り、彼女の痛みが突然伝染した。
彼女に話しをしながら、からまった糸をほぐすように、ひとつひとつ思い出す。
誰にも言えなかったけれど、今となっては遠い記憶だけどわたしもきっと同じ顔をしていただろう。
忘却、という機能はこれからずっと永く生きていくためのものなのだ。
そしてそれは同時に成長を意味するのだと、思いたい。
思えば長い間、わたしはいつも痛がっていた。
かすってもいないのに、当たった当たらないと騒ぎ立てていた。
そして不思議だけどほんとうにほんとうに痛いと感じた時は
痛くない痛くないと自分に暗示をかけるのだ。
「痛くない、痛いはずがない、たかがこれくらいのことで。」
そして続く言葉は 「わたしは強いのだから」
過ぎてしまった今だから、わたしは痛みを実感出来る。
あの時は分からなかった。気付かなかっただけなのか、気付かないふりをしていたのか。
自分のことだけれど、分からない。だいたいいつも、自分の痛みには鈍感なのだ。
かき消してもかき消しても浮かんでくるあの人。言葉。わたしに触れた温度。
そして湧きあがる決してきれいではない感情。
自分の汚さを受け入れられない潔癖さは同時に自分の首を絞める。
眠れない。
すがるように手を伸ばす。
いけないいけないと思いながらも、こうするしかないと言い聞かす。
わたしがわたしとして、日々を生きるために。
これまで、たくさんのひとにちからを貰ったけれど
最後は結局自分だった。
ある時、口に出して言ってみた。「痛い」って。
それから堰を切ったようにどくどくと何かが流れ、崩れていった。
自分で自分を受けれること、認めることが、わたしにとって何よりも難関だったことをその時初めて知ったのだ。
とりあえず蓋をする癖は今も治っていないけれど
鈍感さは少しましになったんじゃないかな。そう、思う。
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ええ写真や。
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マエムラ:
だんだんと、彼女の核の部分に触れるようになりましたね。
「強がりとプライド」だけで、
なんでも乗り越えられると信じていたあの頃。
まぁ実際に、乗り越えて来たと自負していますが。
しかし今おもうと、それは見ていてハラハラする、危なっかしい生き方だったとも思います。
そうやって、なんとかやり過ごす事を目的に蓋をした痛みは、まさに切れ味の悪い刃物。
弱音や本音を吐く事や、吐く場所がある事も武器になる。
いつでも吐けるという安心感が、吐く必要を無くしてくれる。そういうのがいいな。
一度、自分のものにしてしまった習慣は、なかなか完全には消えないもので、
あの頃の名残りは今でも時々、顔を見せますね。
そしてそれに今だに救われる事もしばしば。
そういう自分の凝り固まった部分も愛して、連れて生きようと決意しました。今。
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■taeko kuroyanagi
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